2019年税制改正 新ルール対応版!

法人の保険契約を名義変更する場合の税務取扱い
所得税基本通達36-37

保険契約者の権利の一つとして名義変更があります。

単に保険契約者の名義を変更するという事ではなく、保険料の負担者及び、契約者が個人である生命保険金の受取人はその契約者の3親等以内親族を指定する必要があるため、契約者・保険料負担者・保険金受取人を変更する事が前提となります。

法人から個人へ契約者変更を行う際、その契約権利の評価は所得税法36-37により、原則、名義変更時点での解約返戻金相当額(配当金があればその金額も含む)によって行います

譲渡価格は名義変更時の『解約返戻金額』(原則)

【NEW】2021年7月1日通達改正
『保険契約等に関する権利の評価』の取り扱いについて

解約返戻金が、資産計上額の7割未満の場合は『資産計上額』で評価

昨今、法人から個人に名義変更する際の経済的利益については、一律『解約返戻金相当額で評価(時価額評価)』していましたが、
この評価額を、解約返戻金が資産計上額の7割未満の場合は『資産計上額で評価する』よう適正化されました。
(つまり、譲渡価格が資産計上額となる場合があります)
この改正は、2019年7月8日以降に締結した定期保険又は第三分野(医療保険やがん保険など)の保険契約について、2021年7月1日以降に名義変更するものから適用されており、法人から個人、法人から法人に名義変更する際の評価に適用されます。

通達の改正で影響を受ける保険契約とは?

  • 契約日が2019年7月8日以降である法人契約(法人税基本通達 9-3-5の2に基づき資産計上されている契約)
  • 解約返戻金が資産計上額の7割以下となる『低解約返戻タイプの定期保険・逓増定期保険』が主に対象
  • 2021年7月1日以後に、個人名義や別法人に名義変更する保険契約
※契約日が2019年7月8日より前に加入された保険契約については従前の例(名義変更時の解約返戻金額で評価)によります。

所得税基本通達(法令解釈通達)一部改:新旧対照表[PDF:92.9KB]

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保険契約を現物支給(譲渡)する

名義変更をする主な目的
  • 退職金の全部又は一部として保険契約を現物支給(法人から個人に名義変更)、相続税の納税資金に備えるため
  • 老後の医療保障として
  • オーナー社長の自社株を相続時等に確実に後継者に譲渡するために

生命保険は受取人固有の金融財産
生命保険は受取人固有の金融財産ですので、相続が発生した際、保険金受取人に確実に保険金(現金)を渡すことができますので、自社株や土地などの分割しにくい財産が多い場合に、後継者が受け取った保険金を活用して自社株を相続しながら家族内の争いを防ぐ準備をすることができます。
名義変更に必要な手続き
  • 取締役会等において保険契約を退職等により名義変更する旨の決議・議事録の作成
  • 保険会社所定の名義変更請求書類の提出
  • 法人の経理処置、個人の所得税の支払いなど税務上の手続き

名義変更により生命保険契約を現物支給する方法は2つあります。

退職金として支給する方法
保険契約を名義変更する時点の評価額(解約返戻金額又は資産計上額)で新契約者(主に被保険者が新契約者になることが多い)に譲渡します。

名義変更は解約ではないため「現金が発生しません」が、退職金として支払うことになりますので退職者個人に所得税(退職所得)がかかります。
法人は名義変更手続きと同時に、名義変更時の評価額(解約返戻金額又は資産計上額)を退職金の全部または一部として経理処理します。
解約返戻金(解約価格)と資産計上額との差額を雑収入または雑損失に計上します。
(評価額が資産計上額となる場合は、雑収入・雑損失は発生しません)
保険料の全部または一部資産計上タイプの生命保険を解約した場合は、資産計上額を取崩し、「解約返戻金ー資産計上額」との差額がプラスの場合は雑収入、マイナスの場合は雑損失となります。
新契約者は退職所得として所得税を申告する必要があります。
(分離課税)
※実際に退職をしていないにも関わらず退職所得を適用することはできません。
退職所得
退職金は「退職所得」となり、税制メリットがあります。
1.勤続年数に応じて、退職所得控除があります。
2.退職金に対する課税は1/2になります。
役員等勤続年数が5年以下である人が支払を受ける退職金のうち、その役員等勤続年数に対する退職金として支払を受けるものについては、退職金の額から退職所得控除額を差引いた額が退職所得の金額になります(下記計算式の1/2計算の適用はありません)
3.退職金は分離課税です。
役員報酬等とは別に課税額が計算されますので、退職金額によっては役員報酬に係る税率よりも有利になることがあります。
福利厚生のために役員・従業員に譲渡する方法
法人は名義変更する時点の評価額(解約返戻金または資産計上額)で、新契約者に保険契約を買い取ってもらう形で譲渡します。
新契約者は名義変更手続きと同時に評価額を会社に現金で支払います。
法人は、新契約者から受け取った現金と該当する保険契約の資産計上額との差額を、雑収入又は雑損失として計上します。
保険料の全部または一部資産計上タイプの生命保険を解約した場合は、資産計上額を取崩し、「解約返戻金ー資産計上額」との差額がプラスの場合は貸方に雑収入、マイナスの場合は借方に雑損失とします。
新契約者は名義変更後、保険料負担義務者となりますので、保険料を支払います。
名義変更後に課税される税金の種類
(1)保険を解約するとき
(2)給付金を受取るとき
(3)受取人が保険金を受取るとき
(1)保険を解約したとき(新契約者が解約して解約返戻金を受け取ったとき)
新契約者は一時所得として所得税を申告する必要があります。
一時所得=(受け取った解約返戻金額ー支払保険料等)ー50万円(特別控除額)

課税対象になるのは「一時所得×1/2」ですので、名義変更時に法人に支払った譲渡金額および名義変更後に負担した保険料等に比べて解約返戻金額が大きく増える場合には、役員報酬を増額するよりも有利となることがあります。
(2) 入院や手術、三大疾病や介護などによる給付金を受け取ったとき
  
個人が受け取る入院給付金等については非課税
(3) 受取人が保険金を受け取ったとき(被保険者死亡による生命保険金を受け取ったとき)
 受取人にはみなし相続財産(相続税の対象)として申告する必要があります。
  ※法定相続人1人あたり500万円が非課税になります。
  (例)妻と子2人・・・500万円×3人=1,500万円が保険金のうち非課税になります。
復旧することのできる『払済保険』等、保険契約に関する権利の評価
この取り扱いは、2019年7月8日以降に加入した定期保険や、医療保険などの第三分野保険(法人税基本通達9-3-5の2の取扱いの適用を受けるもの)について、2021年7月1日以降に名義変更する際の権利の評価額に適用されます。
法人税基本通達36-37(2)
『資産計上額>解約返戻金額』となる定期保険や医療保険などが対象
  • 名義変更直前に「元契約に復旧することができる」払済み保険等の手続きをしたことにより、雑損失(損金)が発生している保険契約を、名義変更するとき

 名義変更時の保険契約の権利の評価額は、
 解約返戻金相当額+雑損失(損金)の合計額(以下1+2)となります。

解約返戻金額(解約返戻金が資産計上額の70%以下の場合は、資産計上額)
払済み保険等手続きにより発生した損金額(雑損失)

税務上の取り扱いについては2021年7月1日時点の税制に基づいた一般的なお取り扱いをご案内しています。
よって、将来的に税制の変更などにより、実際の取り扱いと記載されている内容が異なる場合がありますのでご注意下さい。
個別の具体的な税務上の取り扱いについては、税理士等の専門家、所轄税務署にご相談ください。

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法人加入において保険料や解約返戻金、保険金に対する税務取扱いに関する知識は
必須と考えています。

法人専門チーム体制で、法人向け生命保険の商品情報のみならず保険税務の取り扱いについても詳しく説明いたします。
 
※具体的な税務の取扱いについては顧問税理士などの税務の専門家や所轄税務署にご確認の上、手続きをしてください。
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